たなか歯科医院ブログ
妊娠中の歯科治療について
2022-02-24
『妊娠すると歯が悪くなる』とよく耳にしますよね。妊婦さんのお口の中には、むし歯菌や歯周病菌が増えやすくなる条件が揃います。そのため、歯の痛み、歯茎の腫れに悩む方が何人もいらっしゃいます。
『じゃあ歯医者に行っておかないと!』と思った時に、気にかかるのが歯科治療で使われる麻酔やレントゲンではないでしょうか。そこで受診をためらっているとますますお口の中のトラブルが悪化してしまうことも…
適切な時期に治療、メンテナンスを受けていただくため、今回は妊婦さんの歯科治療についてまとめてみました!
◉妊娠中に起きやすいお口のトラブル
妊娠中は女性ホルモンが急激に増えて、お腹の中だけでなくたくさんの変化が身体中に起こります。
それは全身だけでなく、もちろんお口の中にも…
・つわりによって歯磨きが難しくなり、磨き残しが増えやすくなる
・間食が増えて食事が小刻みになることで、お口の中が酸性になりやすくなる
・食の好みが変化し、糖分の多いものをたくさん摂るようになる
・ホルモンの影響で唾液の量が減って、お口の中が洗い流されにくくなる
これらの変化により、お口の中にだんだんと虫歯、歯肉炎、歯周炎などがあらわれてきます。
また、『妊娠すると歯茎が腫れやすくなる』ともよく言われています。
お腹の中の赤ちゃんが元気に育つために、妊娠するとお母さんの身体の中には女性ホルモンが増加します。歯周病菌の中にはこのホルモンを栄養源とするものがいて、活動が盛んになるのです。妊娠中は普段は歯茎が腫れない人も、歯周病の初期症状である歯肉炎になりやすく、元々腫れていた人はさらに症状が進行しやすくなります。
歯周病の炎症は低体重児出産(早産)と関連しているとも言われています。
◉歯科治療で妊娠中に気になること3つ
①レントゲン撮影
虫歯や歯周病は歯や歯ぐきを支える骨の中に隠れていて、お口の中を見ただけでは分からないことがたくさんあります。的確な治療を行うために、必要があった際にはレントゲンを撮る場合もあります。歯科でのレントゲン撮影は基本的にお腹から離れたあごや歯の周りを撮影します。
歯科のデンタルレントゲン撮影は一枚につき約0.008m Sv。日本に住んでいる人が一年に浴びる自然放射線は約2.1m Sv。つまりデンタルレントゲンの放射線量は約262分の1です。
妊娠中のレントゲン撮影は最小限で、細心の注意を払って行われています。
また、必ずお腹まわりに防護エプロンを着用して頂いてから撮影しています。
②麻酔
基本的に歯科で使用する麻酔は局所麻酔です。よく使用されている局所麻酔薬であるリドカインは、無痛分娩や帝王切開にも使われ、妊娠全週で問題なく使用できる薬です。麻酔薬が胎盤を通過することはなく、体内に入ると肝臓などで分解されて、尿とともに排出されます。
むしろ治療の際に痛みを我慢するストレスの方が、胎児への影響が大きいと言われているため、適切に麻酔を使用した方が良いと言われています。
③お薬
お薬の安全性については、お腹の赤ちゃんに実際に試してみるわけにはいかないので、確認されているお薬はありません。
歯科では、妊婦さんにも「比較的安全なお薬」を「必要最低限の量」処方しています。
◉妊娠したけれど治療は受けられるの?
妊娠中も時期や体調を確認しながら安全に治療することができます。
☆妊娠初期(0週〜15週)
赤ちゃんの重要な器官がつくられる大切な時期です。痛みや炎症をひとまず止めるための応急的な処置にとどめて、本格的な治療は安定期か産後に行います。
☆妊娠中期(16週〜27週)
胎盤が完成する安定期に入ります。体調を確認しながら一般的な歯科治療を受けることができます。
☆妊娠後期(28週〜39週)
仰向けで診療すると大きくなった子宮に大静脈を圧迫され低血圧症を起こしやすくなります。母体に負担がかかるので、短時間の応急処置を行うことが多いです。出産後に、ふたたび治療を再開していきます。
◉お家でできる妊娠中のお口のセルフケア
・歯磨きは体調の良い時に行いましょう。テレビを見ながら、お風呂に入りながらなどリラックスできる環境で。
・どうしても歯ブラシをお口に入れるのがつらい時は無理をせず、食後すぐにブクブクうがいなどを行ってお口の中をなるべく清潔に保つようにしてみましょう。うがい薬などを使うのも良いです。
・歯磨き粉も匂いの強いものより刺激が弱いものを選びましょう。
・下を向いて、つばが口の中に溜まらないようにして歯磨きすると、嘔吐感が刺激されにくく磨きやすいです。
・歯ブラシはヘッド(毛がついている頭の部分)が小さいもの(コンパクトなどと書かれていることが多いです)を選びましょう。
・フロスもできれば毎日した方が良いのですが、無理なく続けましょう。
ホルダー付きタイプのY字フロスも手軽に使用できてオススメです。
生まれてたての赤ちゃんのお口に中に虫歯菌はいません。出生後に周囲の人から虫歯菌を貰うのです。そのため、虫歯菌をうつさないようにするには、お母さんお父さんをはじめとするご家族のお口が清潔に保たれていることが重要です。ご自身のお口の中はもちろん、生まれてくるお子さんのお口の健康のためにも定期的なメンテナンスにぜひお越しください!